古代史を学べる歴史漫画│おすすめの作品を1つ紹介

「古代史が面白くなる漫画・火の鳥」
火の鳥

火の鳥というと漫画界の巨匠・故手塚治虫がライフワークとした名作ですが、実はこの作品、古代史に焦点を当てて描かれた作品としても読めるということは意外と知られていません。

そもそも火の鳥は、単行本にして一冊からニ冊程度の中・長編の各シリーズが、大河の如く絡み合う劇的とも言える歴史フィクション大作でありつつ、各一編一編が独立した作品としても機能しています。

ですから、当然、時間軸的に古代を舞台としたシリーズも存在します。すなわち、そのドラマツルギーを通じて古代史への興味を深める入門書としても楽しめるのです。

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邪馬台国や卑弥呼、天岩戸伝説を盛り込んだ「黎明編」

黎明編

火の鳥の第1作にあたる「黎明編」は、当初、昭和29年に学童社の伝説的漫画雑誌「漫画少年」にて連載がスタートしました。しかし、学童社は翌年倒産し、火の鳥「黎明編」はいったん未完となります。

その後、手塚が自身で出版に携わった雑誌「COM」において改めて連載が始まりました。

この「黎明編」は邪馬台国の時代が舞台となっており、卑弥呼、スサノオ、猿田彦、ウズメといったキャラクターが登場します。いずれも日本古代史に深く関わりが有ったり、神話上にてよく知られている神々がモデルとなっています。

スサノオノミコトをモデルとしたスサノオは、本作では邪馬台国の女王・卑弥呼の弟として描かれ、サルタヒコノミコトがモデルの猿田彦は防人、アメノウズメから派生したウズメは踊り子として物語を支えます。

本作最大のトピックは天岩戸伝説と邪馬台国を結び付け、更にそこに皆既日食を絡めた点が挙げられます。

アマテラスオオミカミが岩戸に神隠れすると、世界が闇に覆われたという日本神話を焼き直し、卑弥呼が岩戸に隠れると同時に日蝕が発生し、その偶然の現象によって、大衆たちが思う卑弥呼の神秘性がより増大したというドラマを手塚は用意したのです。

もちろん、フィクションですから正確な古代史とは言えませんが、古代史や神話とは無縁な読者たちに興味を抱かせるには最高にスリリングな物語と言えるでしょう。

古墳時代や埴輪をテーマとした「ヤマト編」

ヤマト編

第3作にあたる「ヤマト編」も古代が舞台となっています。ここでは邪馬台国より少し時代が流れ、日本は「倭」と呼ばれていました。とはいうものの、まだ中央に政権があるわけではなく、ヤマト国は大王が領土を治め、一方、クマソと呼ばれる国では川上タケルなる酋長が人々の頂点に君臨していました。

この作品では古墳時代にスポットを当て、その成り立ちや埴輪の誕生までを、ヤマトとクマソの対立を絡めつつ描いてゆきます。

ヤマト国の王子・ヤマトオグナはクノソの長、川上タケルを暗殺するのですが、この時、川上タケルから名をもらい、ヤマトタケルと名乗るようになります。これも「黎明編」同様、神話からヒントを得た展開で、フィクションの中に更なるフィクションを存在させて逆にリアリズムを生み出すという方法論に手塚は成功しています。

もともと殉死のために人を生き埋めにしていた代わりとして、古墳に埋める埴輪が生み出されたという展開も秀逸です。

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百済からの渡来人や仏教伝来をテーマとした「太陽編」

太陽編

火の鳥の最終作となった「太陽編」は、古代パートと未来パートが交互に挿入される形で時空を超えて物語が展開される異色作でした。

古代パートは白村江の戦いから物語がスタートします。百済王族の血をひくハリマは重症を負い、瀕死の状態となりますが、奇跡的に一命をとりとめます。その後、ハリマは日本(倭国)から応援として出兵してきていた将軍・阿部比羅夫に連れられ、倭国へと渡り、犬上宿禰(いぬがみすくね)と名乗るようになります。

犬上宿禰はやがて倭国にて、中臣鎌足と共に大化の改新を行って即位した天智天皇、そしてその子供・大友皇子および天智天皇の実弟である大海人皇子たちと関わってゆくことになります。

同時期に仏教も日本に伝来するのですが、一度臨死を体験した犬上宿禰はなかば霊的な存在としての能力を有しており、大陸から渡って来た仏教の神仏たちと日本従来の神々との戦いにも巻き込まれていきます。

手塚は伝来してきた仏教と古代神道の対立を天智天皇・大友皇子と大海人皇子の政治抗争――いわゆる壬申の乱に絡めてドラマを展開させることで、日本古代史の中にキーパーソンとしての渡来人・ハリマ(犬上宿禰)を見事に機能させてゆきます。

古代史への「入り口」としては最適な「火の鳥」

いずれのシリーズも史実がフィクションで装飾されており、それゆえ当然のことながら、読めばそのまま正確な古代史が学べるというわけではありません。しかし、どれだけ史実が正確に描かれていたにしろ、つまらない歴史漫画では読者の興味をひくことはできません。

一方の「火の鳥」の諸作品の中には、古代史への魅力的な「入り口」が確実に数多く存在しています。

ですから、ともかくもまずは一読し、気になる事象、人物と巡りあったならば、そのことについてもっと掘り下げてみるという行動をお勧め致します。フィクションだからと侮るなかれです。「火の鳥」は初心者の古代史入門書としては実に最適な漫画作品なのです。

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